アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を微量ずつ長期間にわたり投与することで、アレルギー反応を起こしにくくする免疫寛容の状態を作り出すというアレルギー免疫療法(減感作療法)のひとつです。
以前は、皮下注射によってアレルゲンを投与する皮下免疫療法が主流でしたが、頻回の通院が必要で、日本ではあまり普及しませんでした。舌下免疫療法はアレルゲンのエキスを自分で服用するため、自宅で手軽にでき、副作用が皮下免疫療法に比べて少ないのが特徴です。 現在のところ、国内ではスギ花粉症と、ダニアレルギーによる鼻炎に対してエキスが認可され、治療が実用化されています。 ※当院ではダニアレルギーによる鼻炎に対して治療を行います。
治療効果
- 舌下免疫療法はアレルギーの原因物質に対する免疫反応そのものを改善しますので、根治療法となる可能性があります。くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった鼻炎の症状だけではなく、眼の症状や皮膚のかゆみにも効果があります。3年以上治療を継続できれば、根治まで至る方も含めて、多くの方に効果を実感していただけるといわれています。(効果がない方も一定程度存在します)
- 完全に症状が消失しなくても、使用する薬の量を減らすことができたり、服用が必要な期間を短縮することができる可能性があります。
- 舌下免疫療法を受けている方は(受けて終了した方も)、免疫の過剰な反応が抑えられるため、治療を受けていない方に比べ、今後別のアレルゲン(アレルギーの原因物質)に感作(新たにアレルギー反応を生じること)される確率が低くなります。
当院の舌下免疫療法の対象
- 10~65歳で、ダニアレルギーが原因となるアレルギー性鼻炎の方
- 一般的な投薬治療で十分な効果が得られない方
- 運転業務に従事している等で、抗アレルギー薬の副作用で眠気が出ると困るという方
- 鼻炎の薬を減らしたい方
治療方法
舌下免疫療法は、1日1回舌の下にアレルギーの原因物質のエキスを含み、口腔内の血管から体内に吸収させる(舌下投与)ことで、アレルギー反応を起こしにくい体質を作り出す方法です。
投与するエキスの濃度が一定まで上がれば、月1回の通院で治療が可能(自宅での舌下投与は毎日必要)ですが、アレルギー反応を起こさない程度の体質になるまでは3~5年の治療継続期間が必要とされています。
副作用
ダニにアレルギーをお持ちの方にそのエキスを投与することで治療を行いますので、当然のことながらアレルギー反応が起きる可能性があります。
ただし、これまでの実績では、舌下免疫療法にともなう重篤な副反応はきわめて稀であり、従来の注射による免疫治療よりもかなり安全とされます。
ごく軽度の副作用も含めて、下記のような報告があります。
- 口内、口唇のかゆみ・浮腫、感覚の異常
- 蕁麻疹
- 腹部症状(嘔吐、腹痛、下痢など)
- 喘息発作
- その他(耳のかゆみ、喉の炎症や違和感、くしゃみ、鼻みず、鼻詰まり、目のかゆみ、咳、喘息など)
- 舌下免疫療法では副作用に伴う死亡例の報告はありません。
- 薬(アレルギー原因物質のエキス)が直接触れる口腔内には軽症をふくめ、高い確率で副反応が出現しますが、その多くが自己管理可能で、治療を必要としません。
- 副作用の多くは薬の増量期に起こることが多いです。
- 治療の中断や投与量の変更を必要とするような高度の副作用は、大部分がぜんそく発作や消化器症状です。(初回の投与は必ず医院内で行い、副作用の観察のために投与後30分程度、経過観察をします)
舌下免疫療法の薬の飲み方
ダニアレルギーに対する治療:
1日1回(起床時を推奨)舌の下に免疫治療薬の舌下錠を置きます。舌の下に2分間含んでおき、その後に飲み込みます。服用後5分間はうがい・飲食を避け、服用の前後2時間程度は激しい運動・入浴、アルコール摂取といったといった血圧や血流の変動を伴うような行動を避ける必要があります。
舌下免疫療法が受けられない方
- ダニに対するアレルギーが検査で証明できない方
- ダニの単独ではなく、他のアレルギー原因物質にも高い反応をお持ちの方
- 重症の喘息を合併している方
- 重症の心疾患・肺高血圧症の方
- 重症のアトピー性皮膚炎の方
- 自己免疫疾患や免疫不全症などの方
- 妊娠・授乳婦・その予定のある方
- 本剤の投与でショックを起こしたことのある方
- ステロイド薬や免疫抑制剤を使用している方
- ベータブロッカー、三環系抗うつ薬、MAO阻害剤を服用中の方
※診察の際に、持病や普段服用されている薬をきちんとお知らせください。