日帰り鼓膜形成術・鼓室形成術

当院では皆様方の耳を全力で守るべく、個々人の医療技術を高め、北海道一、日本一の病院を目指すべくスタッフ一同研鑽を積んでおります。

その一つの形として、当院では局所麻酔下のもと最小限の皮膚切開で行うという最も侵襲が少ない方法で耳の手術治療を行なっております。忙しい青壮年期の方はもちろんの事、高齢のため認知症への影響から短期間の入院で済ませたい、経済的な面で入院期間は少なくしたいなど、様々な面において短期滞在手術が浸透してきています。また、心疾患など他の病気のために全身麻酔を受けられなかったり、全身麻酔は不安などの理由から手術を見送り、様子を見られている方も多くおられます。

当院ではこれらを解決するべく、局所麻酔下で、かつ特殊な手術術式を行う事により「日帰り手術」を施行しております。

局所麻酔下日帰り手術(耳鏡下耳内耳科手術)とは?

慢性中耳炎、サーファーズイヤーを含む外耳道狭窄症、真珠腫性中耳炎(一部は適応外)、耳小骨奇形、耳小骨離断などの耳の手術を行うにあたり、一般的には全身麻酔下に耳の後ろの皮膚を大きく切開し、耳の中へと進んでいきます。

この方法だと、術後に耳の中の皮膚が強く腫脹するため、耳内にガーゼなどを詰める必要があり、術後に頭部圧迫包帯を数日巻くことが一般的です。病院によって前後はしますが、術後1週間前後で耳の中のガーゼを抜去(生体吸収性の特殊なスポンジであればそのまま数週間留置したまま)し、7日から12日程度の入院治療で行われる事が多いです。

当院では、局所麻酔薬の的確な部位・量の注入施行と、最新式の顕微鏡下に「耳鏡」と呼ばれる器具を通してのみ手術を行う(耳鏡下耳内耳科手術)ことで、これらの問題を解決しております。当院での術式では、従来の手術時間をおおよそ半分程度と大幅に短縮することができ、かつ日帰りで行うことが可能です。

さらに、当院では全身麻酔ではなく局所麻酔下での手術方法を選択しておりますが、この方法の最大のメリットとして、「より良い聴力が得られる」という事が挙げられます。

例えばA法、B法、C法という手術方法があるとします。全身麻酔で手術を行う場合、A法という手術方法を選択し手術に臨むとするならば、それがどのような結果を生むかは、手術が終了して数ヶ月経過しないとわかりません。そのため、ある程度日数が経過し聴力が改善していない事がわかると、別な選択肢であるB法やC法での再手術を行うといった経過をたどる事があります。

ですが、局所麻酔下に意識がはっきりとしている中で手術を行うと、全ての手術方法を、患者さんの実際の聞こえ具合を確認しながら試す事が出来ます。つまり、局所麻酔下での治療は、一度の手術でより良い聴力を手に入れる事が可能となるのです(もちろんその為には局所麻酔薬の的確な量・部位への注入による完全疼痛除去が必要であり、豊富な経験と高度な医療技術を要します)。

適応年齢についてですが、小生の過去の執刀経験から、下は9歳頃から90歳までと幅広い年齢の方に問題なく施行出来ております。そのため、コミュニケーションがある程度可能であれば、体への侵襲がとても小さく、完全な疼痛除去も可能なため、年齢制限もありません。ぜひ一度お問い合わせいただけたらと思います。

当院での鼓膜・鼓室形成術、サーファーズイヤー治療

鼓膜に穴が空いている外傷性鼓膜穿孔、慢性中耳炎の方、耳小骨奇形、耳小骨離断、真珠腫性中耳炎(真珠腫の進展度によっては適応外)、サーファーズイヤーの方を対象に行っております。鼓膜に穴が空いている方への治療は、穴のサイズが大きくなることで穿孔閉鎖率に差が生じてしまうため、ごく小さな穴であれば鼓膜形成術(ただし穿孔部位、残存鼓膜の状態によっては鼓室形成術へ)、それ以上の大きさである例や、周囲の鼓膜の状況が不良などの例、また穴の位置によっては鼓室形成術の選択をしております。

上述のように耳の後ろを切る一般的な手術方法では写真(ア)のように広く皮膚切開を行いますが、当院での方法では写真(イ)のように内径6mm以下の耳鏡という金属製の筒を通して顕微鏡下で手術を行います。そのため、ごく最小限の皮膚切開を耳の中のより深部に置く事で済むため、負担が大変少なくすみます。これにより、ごく短時間での手術が可能となり、術後の圧迫包帯や耳の中への長期ガーゼ留置をする必要がないなどのメリットが生まれます。

また、局所麻酔下で行うことで、聞こえが改善したかがその場ですぐにわかります。全身麻酔での治療の場合、上述のように本当に聴力が上がっているかどうかはある程度の期間が立たなければわかりません。そのため、実は違う手術方法で行った方がより聴力の改善が得られる場合があるのです。当院での術式は、手術中に患者さんの実際の聞こえ具合を確認しながら、あらゆる手術方法への迅速な変更が可能となるため、一度の手術でより良い聴力を得る事が可能となります。

痛みや耳の中の処置を、局所麻酔だけで行うのは不安という方もいられるかもしれません。ですが、上述のメリットはとても大きなものです。また、豊富な経験に基づく的確な量・部位への局所麻酔薬の注入施行により痛みを感じず、触られているという感覚も消失させる事が可能です。そのため、だいたい9歳から90歳(状態が許せば上限なし)頃といった年齢での治療が可能です。

実際の治療の流れと術後の通院について

受診日当日には保険証、お薬手帳のご持参をお願いいたします(他院よりの紹介状があればそちらもご持参ください)。当クリニック来院後、まずは詳細な問診をお取りいたします。その後、診察と各種検査を実施いたします。手術適応となりましたら、手術にあたって必要な各種検査を受けていただきます。その後、看護師より手術当日の流れや術前後の注意点をご説明いたします。またこの際に、心臓の病気や喘息など他の病気を抱えている方で使用する薬剤が影響しそうな場合には、かかりつけの主治医の先生の意見をお伺いするため受診をお願いする事があります(当院から発行したお手紙を持参のもと)。

手術後の流れですが、遠方の方の場合、頻回な当院への通院治療が困難かと思います。そのため状態が落ち着けば、基本的には紹介元の先生の所での治療を軸として、当院でも1月に一度程度、状態がよくなれば半年や1年に一度の定期通院で経過をみさせていただきます(もちろん紹介元の先生の所へは、当院より手術の流れや状態など詳細にご報告させていただきます。また、遠方の方で紹介元がいない方へは、当院が信頼しております耳鼻科医へのご紹介も可能です。)。

何かご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡ください。

〜当院でこの術式を取り入れた経緯〜

元々は私も道内で全身麻酔下に耳の後ろを広く切開して耳内へアプローチする方法をとっておりました。ですが、さらなる治療がないかどうか模索するため、技術向上を目指して全国の医療施設を訪れたりもしていました。

その中で、東京女子医大東医療センターの須野瀬弘 教授と、仙台・中耳サージセンターの湯浅涼・有 医師の局所麻酔下耳科手術に出会いました。ここで、的確な局所麻酔薬の使用と手術方法の獲得により、「より多くの患者さんにより良い聴力を獲得するのに手助けできる」という事を初めて知り、とても感銘を受けました。

そんな中、現在の私の中耳手術の師匠である湯浅 涼 先生(仙台・中耳サージセンター)にお声をかけていただき、第一回ブータン王国でのボランティア耳科手術へ参加させていただきました(この運動は、東北大震災の際にブータン王国国王が訪日され追悼の意を表されたことから、何か恩返しができないかとの思いで、湯浅 涼 医師が企画され、SPIOのご協力を得て実現したものです)。

湯浅涼先生は1989年に世界で初めて画期的な鼓膜形成術の方法である接着法という術式を開発し、その手術方法は湯浅法(Yuasa’s method)として世界に名を轟かせております。さらにその術式を、移植弁枚数を複数枚使用する方法への発展、完全耳鏡下での鼓室形成術の施行へと発展させ、数多くの患者さんを救っておられる日本で一番経験豊富な先生です。

この活動中に、4日間で計22名(27耳)の局所麻酔下での手術を行いました。この活動に参加できたのは私の一番の財産となり、医師は目の前の患者を救う事に決して諦めずに全力で立ち向かう、そういう医療魂が再度深く心に刻まれました。

そして、この活動中に出会ったのが湯浅涼先生が行なっていた、局所麻酔下耳鏡下耳内耳科手術です。これには本当に感銘を受けました。

「この技術を習得し、難聴など耳で困っている道民の患者さんを救いたい!」という強い思いから北海道を飛び出し、湯浅涼先生に師事いただきながら技術の習得に励みました。この技術は本当に素晴らしいもので、より良い聴力が得られるという現場を何度も目の当たりにしてきました。同院で私が最後に執刀させていただきました数十年来難聴でお困りだった患者さんは、術直後に聴力が格段に改善しているのを実感され、手術室から退室する際に世界が変わっている事に感動し、涙を流されておりました。その際、様々な不安のもと歩み出した私の道は間違っていなかったと強く実感し、共に涙を流したという思い出があります。

今回縁あって当クリニックを開設することになりましたが、少しでも多くの困っている患者さんにこの技術を提供できればと思っております。

さらにそれだけではなく、皆様方の耳・はな・のどに関する適切なケアの提供を行い、よりより生活が送れるよう手助けができればと思っております。


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